【声明】日本国内における排外主義の異常な高まりを深く憂慮し、朝鮮民主主義人民共和国に対する「経済制裁」に反対する声明

2004年12月21日

           市民の意見30の会・東京

 内閣府が12月18日付で発表した「外交に関する世論調査」によると、中国に「親しみを感じる」と回答した人は、日中国交正常化三年後の一九七五年の調査開始以来、最低の37・6%となり、「親しみを感じない」が58・2%と大幅に増加したとのことです。また、韓国への親近感は56・7%と過去最高を記録し、55・5%が日韓関係を「良好」としたとのことですが、しかし韓国と国境を接する朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」と略記)と日本との関係は、それと対照的に異常に緊張した事態となっています。
 横田めぐみさんたちの遺骨が別人のものとする鑑定が発表されたことで、メディアの上には、「経済制裁」を要求する声があふれかえり、急速に強まっています。
 私たち、市民の意見30の会・東京は、このように中国や北朝鮮に対し排外主義的感情が異常に加熱している現状に深い憂慮を禁じ得ません。
 日中間の外交関係の緊張は、なにより、ここ数年、小泉首相が靖国神社に繰り返し参拝したことから生じたものであり、小泉首相はそれにこだわり続けています。中国政府がその中止を求めるのは、A級戦犯をも祀る靖国神社への首相参拝が、過去の侵略戦争を日本が反省していないことの表れととらえるからです。その要求は当然のものであり、私たちも、首相が靖国参拝を中止するよう強く求めるものです。
 また北朝鮮との関係では、私たちは小泉政権に同国との国交を一日も早く正常化することを求めています。同国による日本人の拉致は許されない国家犯罪であり、また遺骨の問題などについての同国の対応には、私たちの理解できぬ経過が多々あり、私たちは北朝鮮政府の明朗、誠実な対応を求めます。しかし、それは、あくまでも外交ルートによる交渉によってなされるべきであり、そのためにも国交の樹立を急ぐべきです。拉致問題を高いハードルとして国交樹立を遅らせることは本末転倒です。
 「経済制裁」は、事態の解決に役立たないばかりか、かえって問題をこじらせるばかりです。制裁とは、懲らしめのために罰を加えることであり、交渉の当事者の一方がそのような態度をとるのは、自ら問題解決の道を閉ざすことだからです。
 北朝鮮と日本の間では、過去の歴史の清算は、いまだ何一つなされていません。しかも日本は50年代の朝鮮戦争の際、米軍に基地を提供し特需景気によって経済復興の足がかりとしました。そのうえ、日米安保体制を維持して北朝鮮を包囲し脅しつける米日韓軍事同盟に荷担し続けました。北朝鮮への侵攻を想定して繰り返された米韓合同軍事演習「チーム・スピリット」は在日米軍基地を強力な足場として強行されました。つい先日、北朝鮮攻略作戦「5055」の存在がスクープされましたが(12月12日付『朝日新聞』)、米軍はピョンヤンを陥落させる同種の作戦計画の策定を数年ごとに続けていて、しかもブッシュ米政権は先制攻撃戦略を放棄しません。第二次朝鮮戦争が始まれば、日本は周辺事態法によって自動的に参戦し、有事法制によってこの国全体がすみずみまで軍事体制化に組み込まれることになります。
 先日明らかになった「新防衛大綱」も「中期防衛力整備計画」も、中国や北朝鮮を脅威ととらえ、東北アジアの軍事的緊張を高めるものです。私たちはイラクへの「経済制裁」が、旧フセイン政権ではなく、同国の幼い子どもたちや貧困層を苦しめるだけの結果を生んだことを知っています。わずかの医薬品さえあれば助かった命が無惨に失われました。北朝鮮に「経済制裁」が発動されれば、同様の事態が繰り返されることになるでしょう。さらに私たちは、イラクへの「経済制裁」が軍事侵略につながったことも知っています。すでに武部・自民党幹事長は12月11日、北朝鮮との外交について「北朝鮮の解放」を念頭に置くと発言しています。これは北朝鮮の現政権を打倒するという意思表示であり、空前の暴言というべきです。
 12月17日に行なわれた日韓首脳会談で、盧武鉉・韓国大統領は「経済制裁」を口にした小泉首相に慎重な姿勢を求めましたし、翌日、韓国の潘基文外相も町村外相に対し同様に自重を求めました。韓国政府は南北の鉄道連結を含め南北の経済関係を非常に強化していますし、ひとたび戦争が勃発すれば韓国が戦場になるのですから、危険な事態を招きかねない日本の「経済制裁」に反対するのは当然のことです。
 どんな問題も武力によらず、どこまでも話し合いによって解決するのが、日本国憲法の前文と第9条が定めているところです。私たちは日本政府がいかなる困難も外交交渉によって乗り切っていくことを求めます。「経済制裁」で得られるものは軍事的緊張だけであり、それは東アジア・東北アジアの平和を破壊することです。
 私たちは、以上の見解に基づいて、平和の創造を希求するすべてのみなさんが、北朝鮮への「経済制裁」に反対する声を大きくあげることを訴えます。

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